【要周知】新たな年金記録問題 自営業者の国民年金第3号届が拒否される(元年金機構職員の体験から)

連続イヤな上司からの脱却

 私は25年ほど勤めた年金機構を退職した後、現在は自営業をしています。元職場の上司からは、退職前に「自営業を下に見ている」と謎に傲慢で失礼なことを言われましたが、知ったことではありません。

 傲慢と失礼が服を着て、仕事には不誠実なその上司の隣で働く不快感は、相当に耐え難いものでした。ただ信じがたいことに、その1つ前の上司は更に酷い有様でした。というのも、その1つ前の上司は四六時中イライラしていて、部下に口答えされたと思いこめば、腹いせに決裁書類を恣意的に何度も突き返すような輩だったのです。こちらは傲慢で失礼な上に、小心で攻撃的でした。

 このような上司が連続して現れるようでは、職場自体に見切りをつけるべきです。

 そんなある時、上司の不誠実フィルターを通して数字が作られていた報告が問題視された際、その上司は堂々としらばっくれて、恥ずかしげもなく部下のせいにしました。その白々しい責任転嫁から上層部は目をそらし、部署全体の仕事ぶりを小馬鹿にしました。その出来事をきっかけに、私はその職場から抜け出すことにしました。

退職後の国民年金保険料

全額免除の不承認

 退職後に始めたばかりの自営業の収入は細々としたものです。必要経費を除いた収入は、年間100万円に届きません

 それでも、元職場から多額の請求書が届きます。元職員だからではありません。国民年金第1号被保険者になったことにより『国民年金保険料納付書』が、元職場である年金機構から送られてくるのです。

 1ヶ月17,510円。私も年金事務所の電話や窓口側では、「保険料の支払いは老齢年金を10年受け取ることで元が取れます」とか、「保険料を支払っておくことで障害年金などの備えにもなります」とか説明していたものです。しかし、今では年金の制度も運営組織も信用していません。個人的な嫌悪感も相まって、払いたくないものです。

 しかし、未納者に対する年金機構の事務的な容赦のなさも知っています。差し押さえなどの強制徴収は未納者の中でも高所得者から選ばれるため、私はその対象にはならないと思いますが、未納者に対する督促は頻繁で、大変煩わしいものになります。

 退職直後は、私も配偶者も所得がなかったため、全額免除を申請して納付義務を免れていました。しかし、配偶者が勤め始めたため、今年の7月からは全額免除の継続審査が不承認になったという通知が届きました。一部免除なら申請すれば通るはずですが、できれば一銭も払いたくありません。

国民年金第3号手続き

 そこで、重い腰を上げて国民年金第3号の手続きをすることにしました。これは、原則として配偶者の職場を通じた手続きとなるため、勤め始めたばかりでややこしい話はもっていきにくいことから、全額免除でいられるうちは先延ばしにしていたのです。国民年金第3号は、その資格があれば手続きから2年遡れるので、のんびりしていました。

 渋い顔をする配偶者になんとか必要書類を渡して、健康保険の扶養と国民年金第3号の手続きをしてもらうようお願いしました。健康保険の扶養は国民年金第3号のように遡れませんが、国民健康保険の保険料は年金に比べれば安いものなので気にしていません。仮に健康保険の扶養が認められなくても、国民年金第3号の書類のみを配偶者の職場を通じて年金機構に提出して欲しいことも伝えておきました。

 健康保険の被扶養者認定と国民年金第3号の手続きは、一体で処理されることが一般的です。ただ、もともと年金機構と同じ社会保険庁から分かれていった協会けんぽであれば国民年金第3号と違う扶養認定結果が出ることのは考えにくいのですが、健康保険組合共済組合は年金機構とは別の認定基準に基づいて審査をするため、違う結果が出ることが現実に考えられます。そのため、健康保険の扶養が配偶者の会社の健康保険組合に認められなくても、年金機構の個別判断で国民年金第3号が認められるケースもありうると先回りして考えていました。

 その後、配偶者の職場から求められるまま追加書類(必要経費を確認するための『収支内訳書』)を作成して提出したりしましたが、結果として健康保険の扶養は認められませんでした。その上、年金機構への国民年金第3号の書類提出も断られてしまいました

 扶養が認められなかった理由は、『収支内訳書』が税務署に提出されたものではないため、健康保険組合としては必要経費が算定できないということでした。私はその年の確定申告を、『事業所得』ではなく『雑所得』で行っていました。『雑所得』の確定申告では、前々年の雑所得の収入が1,000 万円以上でない限り『収支内訳書』は必要ありません。

健康保険の扶養がダメでも国民年金第3号手続きを年金機構に

 私の配偶者の会社の場合、健康保険の扶養を認定するのは健康保険組合ですので、そこからダメと言われればそれ以上反論する気はありません。しかし、国民年金の3号と健康保険組合の扶養とでは、認定の基準が同じではありません。健康保険や国民年金を担当していたのは10年以上前なのでおぼろげですが、そうした説明を窓口や電話でしていた記憶があります。

 そこで、元職場である年金機構に直接、国民年金第3号になるための書類を提出すべく、問い合わせを開始しました。しかし、年金事務所からなかなか噛み合った話を聞けません。どうしても「配偶者の会社を通じて書類を出してもらう必要がある」と言われて、もう一度配偶者に書類を押し付けた上でやはり書類を再び戻される気まずさを味わったり、果ては「国民年金3号を決めるのは配偶者の会社」とまで言われる始末。
 こちらが知らないと思って調べもせず無茶苦茶いうな、と思いました。しかし、「私は元職員ですけど」などと言うのもみっともないので言いません。

 そこで、説明内容の中でおかしいと思う点をなるべく丁寧に話して、奥にいるだろう誰かもっと詳しい人に相談して調べてもらうよう促しました。粘り強く頑張ったところ、主張の根拠条文を読み上げたのがトリガーになったのか、突如として書類を事務センターに提出するよう案内されました。必要書類は「収入が確認できるもの」と言われるだけで、それまでに説明した事情に応じた必要書類としては確認できそうにありません。スルーパスされたボールの気分です。

 仕方なしに、配偶者の会社に提出したのと同じ書類を提出しました。

 自営業者を3号認定する際の必要書類などが、複雑怪奇に絡み合うマニュアルのどこかや本部との疑義照会などで具体的に示されているのではないかと期待していたのですが、少なくとも電話対応での周知はされていないようです。

 それから、書類を事務センターに提出してから3ヶ月して、『国民年金第3号被保険者資格該当通知書』が届きました。その1ヶ月前に書類の受付と進捗状況の確認のため問い合わせをしたところ、書類に不備があるため返戻予定と言われていましたが、結局返戻はされず、追加の書類を求めらることもなく、申請通りに国民年金3号の資格が1年ほと遡って認められました。

 ようやく、不要な国民年金保険料の支払いから免れることができたのです。

自営業者の3号拒否事案

年収130万円未満とは

 ところで、私と同様の状況で、国民年金第3号になるべく年金機構に問い合わせをしている方は、どのような案内をされているのでしょうか。

 年金機構の職員が問い合わせに対して、正しい情報を不足なく説明しているものと当たり前に信じると、本当は3号になれるかもしれないのに届出さえ出す機会を失い、損をしてしまうかもしれません

 健康保険や年金の扶養の基準は『所得』でなく『収入』です。しかし、これら『所得』や『収入』の意味合いを、年金事務所の職員が皆しっかり把握しているとは言えません。過去の自分も在職中は確定申告もやったことがなかったので、その区別はぼんやりとしたものでした。

 それが関係してるかは分かりませんが、私が自営業者として年金事務所に扶養の条件や必要書類を確認したくても、はっきりとした説明が得られませんでした。あの説明では、確定申告書の『収入金額等』の欄(経費等を控除する前の収入額)が130万円以上であることで、扶養には入れないものと思い込んでしまいかねません。

 しかし、『従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き』(日本年金機構HPへ外部リンク)の(2)イ.(エ)「自営(農業等含む)による収入、不動産収入等がある場合※」には、「※自営業者についての収入額は、当該事業遂行のための必要経費を控除した額となります。」という記載があります。『収入金額等』から必要経費を引いた後の額が130万円未満であれば、年金機構では扶養を認めているのです。

 ただし、ここでいう『必要経費』は、確定申告で認められる経費よりも狭い範囲になるようです。私の配偶者の健康保険組合では、「仕入金額」「荷造運賃」のみが含まれ、「地代家賃」「通信費」「消耗品費」は含まれないとのことでした。

 また、必要経費を認定するための範囲や必要書類について、日本年金機構健康保険組合共済組合ではそれぞれの規定があるため、同じではありません。そのため、配偶者の健康保険組合共済組合では扶養が認められなくても、日本年金機構の基準による国民年金第3号は認められる、ということがあり得ます。

想定事例

 ここで想定している自営業者の収入の内訳とは、以下のようなケースです。

[本人]自営業者

収入金額等:200万円

必要経費:160万円

必要経費を除いた収入:40万円

 上記の場合、本人の「必要経費を除いた収入」が40万円で、扶養のための収入基準130万円未満であるため、健康保険の扶養及び国民年金第3号と認められる可能性があります。

 しかし、『必要経費』について、健康保険と国民年金それぞれの運営団体が要求する証拠書類を提出できなければ、その控除は認められずに『収入金額等』の200万円が収入とみなされるため、健康保険の扶養も国民年金の3号も認められないことになります。

必要書類

 私の場合、税務署には提出の必要がない『収支内訳書』が、配偶者の健康保険組合には必要経費の証拠書類として認められませんでしたが、年金機構には認められました。そのため、健康保険被扶養者にはなれず、国民年金第3号被保険者にはなれたのです。

 とはいえ、配偶者の会社の健康保険組合では被扶養者と認められないと結論が出た後、国民年金第3号になるまでには結構な時間と労力を費やしました。年金事務所に状況を説明して相談しても、健康保険の扶養でなければ国民年金第3号にもなれない、という予断をもった対応だったと思います。年金機構が認める必要経費の種類や必要書類を確認しようとしても、そこまで話が進んでいかないのです。

 どうやら、配偶者の会社の健康保険の扶養と、国民年金第3号とでは資格期間にズレが生じることもあることを、認識していない年金機構職員が少なくないようです。もしかしたら、問題視すべき数の自営業者が、本来は払う必要のない国民年金保険料を毎月17,510円も払い続けているかもしれません

 国民年金第3号を諦めて免除制度を利用しようとしても、免除の審査には配偶者の所得も関わってきます。そのため、配偶者が会社員として一定の基準以上の所得があれば、本人の所得が低くても免除申請が却下されてしまうのですから救われません。

新たな年金記録問題への対応策

年金機構職員の認識調査

 では実際、どの程度の数の自営業者が、年金機構職員の制度理解が不十分な説明によって国民年金第3号の届出を拒否され、1ヶ月17,510円もの余分な出費を強いられているのでしょうか。

 公平に考えて、年金機構の職員とのやり取りで的確な回答が得られなかったのは、私の聞き方が悪かったのかもしれません。他の問い合わせ方をすれば、案外すんなりと、書類提出の案内までこぎつけた可能性はあります。

 または、私が問い合わせをして誤った回答をした何人かの職員は、いずれもたまたま担当部署に配属されたばかりの新人だったのかもしれません。ベテランの国民年金担当職員に当たっていれば、自営業者が第3号の届出を提出する際の注意事項を的確に説明してくれていたかもしれません。

 自営業者が扶養に入る場合の問い合わせに対して、どの程度の割合で年金機構職員が的確に回答できるのか-このことを、年金機構は調査して明らかにしてほしいと思っています。

 その結果、年金機構職員がある程度危険な割合で、自営業者が国民年金第3号の届出を誤った説明で妨げていたと分かれば、次にはそれを正すための方策を考えることになります。

年金機構は事務処理誤りに百戦錬磨

 日本年金機構には、かつて社会保険庁だった時代から培った、年金記録問題や数々の事務処理誤りに延々と対応してきた実績があります。それはもう膨大な作業と予算を投入して積み上げた実績です。年金記録問題の初動では、すべての年金受給者・加入者に対して『ねんきん特別便』を発送し、その後も回答がなければ繰り返し発送をした徹底ぶりです。当時の電話相談センターは24時間正規職員が対応していたという、費用対効果も職員のワークライフバランスもお構いなしの大騒ぎでした。その成果として、平成19年に発覚した5,095 万件の未統合記録のうち、令和7年9月時点で2,123万件しか基礎年金番号に統合されていないのは残念なところではありますが。(「年金記録問題に関する取り組み」(日本年金機構HPへ外部リンク)の「未統合記録(5,095万件)の解明状況(令和7年9月時点)」を参照)
 それに比べれば、特に自営業者に関してどうやら誤った認識が広がっていそうな国民年金第3号の正しい認定基準を周知するのは、現実的な規模で済むことでしょう。

 難しいのは、3号の届出の時効の関係です。国民年金第3号の資格は、届出から2年しか遡ることができません。それより前の期間は、配偶者の扶養の状態が確認できたとしても、原則として(砂上の楼閣の年金制度には常に過去の亡霊がつきまとう。この場合は3号特例などで時効の例外がある)国民年金第3号被保険者とはなれません。そもそも、市役所で取れる課税証明書過去5年分なのですから、それ以前の資格を確認するのはますます難しくなります。

年金制度は世間の声で変わりやすい

 しかし、救済措置の可能性はあります。これまでも、年金機構は年金記録問題に対応するにあたって、時効特例法年金確保支援法など、数々の後付の法律をかぶせることで過去の制約を振り払ってきたのですから。その分、制度は複雑化して土台が揺らいでいる気はしますが、今を生きる私たちが気にすべきことではないでしょう。

 まずは、①配偶者が厚生年金被保険者の期間に、②本人が自営業で必要経費を除いた収入が130万円未満で、③国民年金に加入していた期間があれば、国民年金第3号になれないかを年金機構に問い合わせてみてください。

 その際、話が噛み合わないなと思ったら、下記[まとめ]の内容を話してみてください。

 もしも、この記事が役立って誤った国民年金第1号から正しく3号になれる方が一人でもいれば、大変嬉しく思います。

[まとめ]

  • 国民年金第3号になるための条件、130万円未満の『収入』とは、必要経費を除いた金額
  • 健康保険組合共済組合健康保険の扶養を認められなくても必要経費等の認定基準が異なる年金機構では、国民年金第3号として認められる可能性がある
  • 配偶者の会社で健康保険の扶養が認められないことで、国民年金第3号の届出を拒否するような、制度理解が不十分な説明を年金機構職員がすることもある

※今回あった事例は、収入状況・提出書類・事務センター判断がそろった個別案件であり、すべての自営業者に同様の結論が出るとは限りません。

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