今回で最終回です。
これまでの選択により、シナリオは下記のように5つに分岐します。
これまでのシナリオで選択したルートに応じて、エンドシナリオにお進みください。
[ルート]1*→2*→3N:エンドA (「*」は「Y」でも「N」でも同じルート)
[ルート]1N→2*→3Y→4N:エンドB
[ルート]1Y→2Y→3Y→4N:エンドC
[ルート]1N→2*→3Y→4Y:エンドD, 1Y→2N→3Y→4Y:エンドD
[ルート]1Y→2Y→3Y→4Y:エンドE
※このシナリオはフィクションです。
エンドA
【オレ】63歳:厚生年金保険に21年加入、国民年金に19年納付。配偶者なし。
【彼女】63歳:国民年金を40年納付。配偶者なし。
「ずいぶんと、話してなかったな」
「そうだな」
「昔はあんなに話してばかりいたのにね」
高校時代の二年間だけでなく、卒業後もしばらくは付き合いが続いていたオレたちだ。その関係を壊してしまったのは、オレからだという自覚がある。オレが離れて行った後、アイツと彼女まで距離を置くようになってしまったのも、オレの残した棘が無関係ではないだろう。
今のオレは、ミュージシャンとしていくつかヒット曲を出し、年末には紅白歌合戦に出たりもしているうちに、大御所と言われることもあった。40歳を過ぎた頃に音楽関連の販売事業を手放して以来、会社経営には関わっていない。
一方で、彼女は日本でその世代を代表する大女優になっていた。
極め付けは、『内閣総理大臣』になったアイツ。
寂しい気持ちを抱えたなりに、それぞれよくやってきた。
「悪かった」
「本当だよ」
「まったくだ」
遠慮容赦なく浴びせられる二人の非難に、オレは首をすくめた。
「もうすぐ年金をもらう歳になっちゃったじゃない」
「年金?」
「なんだ、キミには去年の8月に、もう『年金請求書』がきているはずだろう?」
「はん? いや知らんが、首相ともなるとそんなことまでわかるものなのか?」
「友人の誕生日を忘れるほどもうろくしてはいない。それと、年金の受給開始年齢と年金請求書がその3ヶ月前に届くというくらいは知ってないと、国会でにわか知識の質問者に馬鹿にされる」
「じゃあさ、私には来年、『年金請求書』がくるの?」
「いや、キミは国民年金のみだろうから、『年金請求書』がくるのは65歳になる3ヶ月前だな。ずっと女優業で、会社勤めはしてないだろう?」
「うん、そうだね。そっか、65歳になると年金もらう歳なのかあ」
「む、年金制度の広報はテコ入れが必要か? とは言え、キミたちは参考にならんからな。年金がなくても困らない現役でいるものな」
「まあねえ、税理士さんやマネージャー任せでよく知らないんだけどね」
「オレも、入ってくる金と出ていく金のどちらが大きいかすら、よく知らん。年金ってのがもらえるなら、もらっておくかが」
「そうしろ。手続きもマイナンバーで簡単だ」
「そういうおまえは、来年からか?」
「僕の受給開始年齢は64歳になるから、来年と言っても再来年度になるけどな。だが、僕は年金を受け取らず、支給停止を申し出るつもりだ」
「なんだそりゃ? 後でもらうことで増えるとかいうアレか?」
「キミのいうアレは、65歳からの年金の繰り下げのことだな。それではなく、ただ年金を受け取らないという申し出をするだけだ。僕に得はない」
「え、得はないのにそんな制度があるの? なんのため?」
「そのうち誰かの気まぐれで、政治家の年金額を公表しろとなったときに、自らの意思で受け取りを辞退している、と返せたらかっこいいだろう?」
「かっこいいかあ?」
「かっこいいかも」
年相応の話題は、 オレたち三人の旧交をほどよく温め直した。
いつの間にか雪がやみ、オレたちは傘を畳んだ。
「店に戻るか」
「ああ」「そうね」
オレたち三人が離れていた時間は巻き戻らないが、それぞれの今にたどり着くために必要な時間だったのだから、後悔はない。
だが、何かおもしろいことを思いついた時に、明日からはためらわずアイツか彼女に電話がかけられる。ただそれだけのことで、心が軽くなった。
オレにはまだまだ、やりたいことがたくさんあったはずだ。それはこれから、やればいい。
『オレ』の老齢年金請求で添付する書類等
- 「年金を受け取る口座の通帳の表紙と、表紙をめくった見開きページのコピー」
(年金受取口座の、口座名義人カナ氏名、金融機関名、支店番号、口座番号を確認します。なお、貯蓄口座を年金の受取口座にはできません) - ご本人の個人番号(マイナンバー)記入欄に、ご本人のマイナンバーを記入
( 受給開始年齢の3ヶ月前に送られてきた「年金請求書」の中で、「マイナンバーが登録済みの方」と表示されていた場合は、記入不要) - ご本人の個人番号(マイナンバー)を記入した「年金請求書」を窓口で提出する場合には、マイナンバーカードの原本の提示が必要。
- ご本人の個人番号(マイナンバー)を記入した「年金請求書」を郵送で提出する場合には、マイナンバーカードの個人番号が記載された面のコピーの添付が必要。
『彼女』の老齢年金請求で添付する書類等
- 上記『オレ』の場合と同じ
エンドB
【オレ】63歳:厚生年金保険に41年加入、国民年金を2年納付。配偶者なし。
【彼女】62歳:国民年金を40年納付。配偶者は『アイツ』。『アイツ』の厚生年金保険の加入は20年未満。
雪がやんだことに気付き、オレたちは傘を畳んだ。
「それにしても……宇宙にまで行くとはな。キミは本当に、なんでも実現してしまうな」
いつも冷静なアイツが、オレのやったことで興奮させるのはいい気分だった。
「おう、あれは痛快だったな。どうだ、見たか!」
彼女が座る反対側の左腕を、勢いよく上に振り上げた。
彼女は突然の大きな動きに驚いたが、柔らかい笑顔で許してくれた。アイツは何度もうなずいていた。
「僕も、総理大臣になったぞ」
「私は女優よ?」
「「「ハハハハハハハ」」」
オレたちはよくやってきた。これからも、やっていけるだろう。
隣で座る彼女は、わずかにだがアイツの側に身体を傾けている。それに気付くと、懐かしいような寂しさを覚える自分に驚いた。
なに、配偶者がいない方が、年金の手続きが簡単に済んでいい。
そんなふうに思い、二人に向けてもう一度笑ってみせた。
『オレ』の老齢年金請求で添付する書類等
- 「年金を受け取る口座の通帳の表紙と、表紙をめくった見開きページのコピー」
(年金受取口座の、口座名義人カナ氏名、金融機関名、支店番号、口座番号を確認します。なお、貯蓄口座を年金の受取口座にはできません) - ご本人の個人番号(マイナンバー)記入欄に、ご本人のマイナンバーを記入
( 受給開始年齢の3ヶ月前に送られてきた「年金請求書」の中で、「マイナンバーが登録済みの方」と表示されていた場合は、記入不要) - ご本人の個人番号(マイナンバー)を記入した「年金請求書」を窓口で提出する場合には、マイナンバーカードの原本の提示が必要。
- ご本人の個人番号(マイナンバー)を記入した「年金請求書」を郵送で提出する場合には、マイナンバーカードの個人番号が記載された面のコピーの添付が必要。
『彼女』の老齢年金請求で添付する書類等
- 「年金を受け取る口座の通帳の表紙と、表紙をめくった見開きページのコピー」
(年金受取口座の、口座名義人カナ氏名、金融機関名、支店番号、口座番号を確認します。なお、貯蓄口座を年金の受取口座にはできません) - ご本人の個人番号(マイナンバー)記入欄に、ご本人のマイナンバーを記入
( 受給開始年齢の3ヶ月前に送られてきた「年金請求書」の中で、「マイナンバーが登録済みの方」と表示されていた場合は、記入不要) - 配偶者の個人番号(マイナンバー)記入欄に、配偶者のマイナンバーを記入
- ご本人の個人番号(マイナンバー)を記入した「年金請求書」を窓口で提出する場合には、マイナンバーカードの原本の提示が必要。
- ご本人の個人番号(マイナンバー)を記入した「年金請求書」を郵送で提出する場合には、マイナンバーカードの個人番号が記載された面のコピーの添付が必要。
エンドC
【オレ】63歳:厚生年金保険に41年加入、国民年金を2年納付。配偶者は『彼女』。配偶者の年収は850万円(所得は655.5万円)以上。
【彼女】62歳:国民年金を40年納付。配偶者は『オレ』。『彼女』本人の年収は850万円(所得は655.5万円)以上。
雪がやんだことに気付き、俺たちは傘を畳んだ。
「それにしても……宇宙にまで行くとはな。キミは本当に、なんでも実現してしまうな」
いつも冷静なアイツを、オレのやったことで興奮させるのはいい気分だった。
「おう、あれは達成感が格別だった。やったぜ!」
両手を斜め上に突き出して、オレは率直にガッツポーズを見せた。
バッ、とアイツも同じポーズで応える。
オレとアイツがその姿勢のまま、間にはさまれた彼女を見つめていると、彼女は苦笑しながらも、二人に負けない勢いで両手を突き出した。
「「「ハハハハハハハ」」」
冷め切らない酔いも手伝い、大声で笑い合った。
「僕は、キミたちと出会えてよかったよ」
「こちらのセリフよ。ね?」
「まあ……」
そんな気恥ずかしいことを言ってくる二人は、まだ酔っ払っているのではなかろうか。しっかりシラフを取り戻したオレはといえば、妻の代弁にあいまいな同意を示すので精一杯だ。
「なあに、まだあれはお試しだ。次は月まで、二度目のハネムーン旅行に行くぞ!」
「へえ、そうなのかい?」
「そうらしいわよ。フフフ」
実際、その計画は詰めの段階に入っている。事前の訓練期間のことなども考えると、彼女の仕事共々、調整すべきことは多い。
「そう言えば、年金の手続きもやっておかないとな」
「ほう、そんなことまで自分で把握してるのか? 意外だな」
「オレぐらい苦労してれば、金回りの手続きには敏感になるさ」
「私はそっちのほうは全然。貴方にお任せね」
「ウ、この歳になっても、二人の仲を見せつけられると堪えるよ」
アイツがおどけて言った。
「ま、素敵な奥様がありながら」
彼女もふざけて返す。
「酔いもいい感じに冷めてきた。飲み直すか」
「そうだな」
「二人共、身体のことも考えて程々にね」
三人そろって、同窓会の会場に戻ることにする。
いい同窓会で、いい夜だった。
『オレ』の老齢年金請求で添付する書類等
- 「年金を受け取る口座の通帳の表紙と、表紙をめくった見開きページのコピー」
(年金受取口座の、口座名義人カナ氏名、金融機関名、支店番号、口座番号を確認します。なお、貯蓄口座を年金の受取口座にはできません) - 「戸籍謄本」
(年金受給権の発生日以降かつ「年金請求書」提出日の6ヶ月以内に交付されたもの) - 配偶者の個人番号(マイナンバー)記入欄に、配偶者のマイナンバーを記入
『彼女』の老齢年金請求で添付する書類等
- 「年金を受け取る口座の通帳の表紙と、表紙をめくった見開きページのコピー」
(年金受取口座の、口座名義人カナ氏名、金融機関名、支店番号、口座番号を確認します。なお、貯蓄口座を年金の受取口座にはできません) - 「戸籍謄本」
(年金受給権の発生日以降かつ「年金請求書」提出日の6ヶ月以内に交付されたもの) - 配偶者の個人番号(マイナンバー)記入欄に、配偶者のマイナンバーを記入
エンドD
【オレ】63歳:厚生年金保険に41年加入、国民年金を2年納付。配偶者なし。別居だが生計維持関係のある16歳の子あり。子の年収は850万円(所得は655.5万円)未満。
【彼女】62歳:国民年金を40年納付。配偶者は『アイツ』。『アイツ』の厚生年金保険の加入は20年未満。
長い間離れていた時間を三人の会話で埋め合わせる時間は楽しすぎて、あっという間に過ぎていった。
それでも、無視することはできない特別な通知音がオレの携帯から鳴った。
「悪い」
オレは一言断りをいれて、携帯のメッセージに目をやった。
〈おはよう〉
そのメッセージに、オレもすかさず朝の挨拶を返した。
「息子からだった」
「ほう」
「あら」
SNSを通じてお金を配る試みは、始めてから20年以上になる今でも続けている。それは当初の目論見通り、多種多様な喜びを共有できると共に、他では手に入らないマーケット調査の感触を得ることができた。更に驚くべきことに、お金配りに起因して、独身のオレが息子を持つという出来事が転がり込んできた。
「おまえが養子をとると聞いた時は、耳を疑ったもんだ」
「ホント、うまくやっていけるのかハラハラしたわ」
「それは心配をかけたな。だが、今のところうまくやってるよ」
お金配りに応募してきた声の中でも、あの子のそれは異彩を放っていた。若干12歳だというのに、あの子はオンラインコンテンツを販売するプログラムを組んだから、オレにビジネスパートナーになってくれ、といってきたのだ。
オレはそのプログラムを実際に触ってみて、あの子の背後に別の、優秀だが子供を使って目を引こうとする狡さのある大人がいるだろうと疑った。だが、あの子はそんな反応を見越したように、直接会って話をさせてくれ、と熱心かつ粘り強く持ちかけてきた。
ついに折れてあの子と直接面会を果たした時、オレはかつてない衝撃を受けた。
背後に大人がいたとしても、オレは惜しみなく金を出す気でいたというのに、あの子の言葉に偽りは一片もなかったのだ。直接顔を合わせて会話をしたあの子は、まさしく天才児だった。それからというもの、オレはどんな大物との会食や重要なランチミーティングよりも優先して、あの子と一緒に食事をする時間を確保した。
そんなあの子は、両親を失っており、児童養護施設にいた。オレの寄付対象にもなっていたその施設では、可能な限りあの子の才能を尊重していたが、それでは十分でないと、オレは考えた。
「オレと一緒に暮らすか?」
「いいの? もちろん、うん! うん! イエスだよ!」
厳粛なあのやりとりを思い出すと、今でも目頭が熱くなってしまう。
いま、あの子はアメリカの大学に留学をしている。日本では高校生の年齢だが、飛び級してでもアメリカの大学に行くのが、あの子の才能に見合ったやり方だった。
その恩返しのように、あの子は頻繁に、オレのビジネスに実際に役立つアイデアや情報を送ってくれた。
かつてオレにそうしたように、アメリカの著名人と強引に面会をして、時には気に入られたりして友好関係を広げているようだ。それは、オレでさえ容易には手に入れられない、とんでもなく価値のあるコネクションだ。
すでに一人前以上の働きをしているあの子だが、嬉しいことに生活費の面倒はオレがみている。
「年金の手続きで、あの子の在留証明と保険証のコピーがいるよ」
オレはそんな苦労を二人に自慢した。
「年金?」
「そんな年齢だな」
オレたち三人はそれぞれのやり方で、世界の平和に貢献してきた。
その志は、次の世代に引き継ぐ見通しも明るいが、オレたち自身が引退するのはまだまだ先のことだろう。
『オレ』の老齢年金請求で添付する書類等
- 「年金を受け取る口座の通帳の表紙と、表紙をめくった見開きページのコピー」
(年金受取口座の、口座名義人カナ氏名、金融機関名、支店番号、口座番号を確認します。なお、貯蓄口座を年金の受取口座にはできません) - 「戸籍謄本」
(年金受給権の発生日以降かつ「年金請求書」提出日の6ヶ月以内に交付されたもの) - ご本人の個人番号(マイナンバー)記入欄に、ご本人のマイナンバーを記入
( 受給開始年齢の3ヶ月前に送られてきた「年金請求書」の中で、「マイナンバーが登録済みの方」と表示されていた場合は、記入不要) - 海外在住の子の「在留証明」
(年金受給権の発生日以降かつ「年金請求書」提出日の6ヶ月以内に交付されたもの) - 被扶養者である子の「健康保険被保険者証」のコピー
- 「生計同一関係に関する申立書(加給年金・子の加算)」(日本年金機構HPに様式あり)
- ご本人の個人番号(マイナンバー)を記入した「年金請求書」を窓口で提出する場合には、マイナンバーカードの原本の提示が必要。
- ご本人の個人番号(マイナンバー)を記入した「年金請求書」を郵送で提出する場合には、マイナンバーカードの個人番号が記載された面のコピーの添付が必要。
『彼女』の老齢年金請求で添付する書類等
- 「年金を受け取る口座の通帳の表紙と、表紙をめくった見開きページのコピー」
(年金受取口座の、口座名義人カナ氏名、金融機関名、支店番号、口座番号を確認します。なお、貯蓄口座を年金の受取口座にはできません) - ご本人の個人番号(マイナンバー)記入欄に、ご本人のマイナンバーを記入
( 受給開始年齢の3ヶ月前に送られてきた「年金請求書」の中で、「マイナンバーが登録済みの方」と表示されていた場合は、記入不要) - 配偶者の個人番号(マイナンバー)記入欄に、配偶者のマイナンバーを記入
- ご本人の個人番号(マイナンバー)を記入した「年金請求書」を窓口で提出する場合には、マイナンバーカードの原本の提示が必要。
- ご本人の個人番号(マイナンバー)を記入した「年金請求書」を郵送で提出する場合には、マイナンバーカードの個人番号が記載された面のコピーの添付が必要。
エンドE
【オレ】63歳:厚生年金保険に41年加入、国民年金を2年納付。配偶者は『彼女』。16歳の子あり。配偶者の年収は850万円(所得は655.5万円)以上。子の年収は850万円(所得は655.5万円)未満。
【彼女】62歳:国民年金を40年納付。配偶者は『オレ』。 『彼女』本人の年収は850万円(所得は655.5万円)以上。
長い間離れていた時間を三人の会話で埋め合わせる時間は楽しすぎて、あっという間に過ぎていった。
ガラリ、と勢いよく店の扉が開き、その時間は中断した。
「おおーい、仲良し三人組さん。そろそろ入らないと、風邪ひくぞ」
「そうそう。ついさっき、あの子がまたSNSでやらかして、大騒ぎになってるぞ。知ってるか?」
「なんだって?」
彼女とアイツのかつてのクラスメイトに知らされて、オレは携帯からSNSをのぞいた。
〈パパとママがボクを置いて出てったきり、帰ってこない(´・ω・`)〉
あの子の思わせぶりなその一文の投稿は、凄まじい勢いで拡散し、様々な風聞を量産していた。日本で最大級の資産を持つことで知られるオレたち夫婦について、不吉この上ない憶測が飛び交っている。
「おい、これは今夜のうちに鎮火しておかないと、明日の株式相場や為替にも影響しかねないぞ」
そんなふうに、日本国首相直々に釘を刺されたら、オレだって急いで手を打たなければならない。
「まったくもう、あの子ったら」
あの子をたしなめるのは、『ママ』こと彼女に任せていい。
あの子とは、SNSを通じたお金配りを続けている中で縁があり、子のない夫婦だったオレたちが養子に迎えたのだった。
お金配りに応募してきた声の中でも、あの子のそれは異彩を放っていた。若干12歳だというのに、あの子はオンラインコンテンツを販売するプログラムを組んだから、オレにビジネスパートナーになってくれ、といってきたのだ。
オレはそのプログラムを実際に触ってみて、あの子の背後に別の、優秀だが子供を使って目を引こうとする狡さのある大人がいるだろうと疑った。だが、あの子はそんな反応を見越したように、直接会って話をさせてくれ、と熱心かつ粘り強く持ちかけてきた。
ついに折れてあの子と直接面会を果たした時、オレはかつてない衝撃を受けた。
背後に大人がいたとしても、オレは惜しみなく金を出す気でいたというのに、あの子の言葉に偽りは一片もなかったのだ。直接顔を合わせて会話をしたあの子は、まさしく天才児だった。それからというもの、オレはどんな大物との会食や重要なランチミーティングよりも優先して、あの子と一緒に食事をする時間を確保した。
そんなあの子は、両親を失っており、児童養護施設にいた。オレの寄付対象にもなっていたその施設は、可能な限りあの子の才能を尊重していたが、それでは十分でないと、オレは考えた。
「あの子を養子にしたいと思うんだけど」
「いいわ。にぎやかになりそうね」
オレが彼女に養子縁組の相談を持ちかけると、彼女はためらいのない笑顔でそう返した。
「オレたちと一緒に暮らすか?」「私たちと一緒に暮らしましょう?」
「いいの? もちろん、うん! うん! イエスだよ!」
神聖なあのやりとりを思い出すと、今でも目頭が熱くなってしまう。
オレたち夫婦で愛情を注ぐあの子は、恩返しを急ぐように、オレに値千金のアイデアや情報を山と返してくれた。オレと特に彼女は、あの子が身体的にも情緒的にも無理をしているような兆候がいか、絶えず気を配った。だが、どうやらあの子は、才能を存分に振るい、世界をあっと言わせるためなら、元気いっぱいで集中力が続くタイプだったらしい。
オレや彼女の人脈と、ネットを駆使するあの子はその才能を遺憾なく発揮し、アメリカの巨大企業が研究を進めるテーマの難題を先んじて解決してのけた。そういったことが、すでにいくつも重なった。
今や、日本が世界一の経済大国に返り咲くのは時間の問題と言われ、電気自動車の普及率は世界一を実現している。その大躍進に、宇宙関連産業で世界一の規模を誇るオレの会社は一役買っていて、その後押しにはあの子の才能が間違いなく力になっていた。
だが、巨大な才能に見合う稀代の奔放さを内面に折り畳んでいたあの子は、今ではちょっと目を離すと、すぐに日本中を揺さぶるようないたずらをやってのける。まったく困ったものだ。
「そう言えば『年金請求書』がオレのところに来ていたが、ベーシックインカムへの切り替えはまだなのか?」
ふと思い出して、オレはアイツに聞いた。
ベーシックインカムの有用性はオレが声を大にして主張してきたところだ。従来の制度からの切り替えは慎重を要するが、政治的な議論はそろそろ飽きてきた。
「まあ待て。こんなところでは何も言えん」
アイツは頭を悩ませる課題を持ち出されて、苦々しそうだ。
「みんなにお金が行き渡るといいわね」
「簡単な仕組みでな」
「それは僕も同感だ」
オレたち三人が約束した世界平和は、すでに次の世代の力も合わさって、いい方向に向かっていた。
だが、オレも彼女もアイツも、まだまだやりたいこと、やるべきことはたくさんある。大いに楽しみなことだ。
『オレ』の老齢年金請求で添付する書類等
- 「年金を受け取る口座の通帳の表紙と、表紙をめくった見開きページのコピー」
(年金受取口座の、口座名義人カナ氏名、金融機関名、支店番号、口座番号を確認します。なお、貯蓄口座を年金の受取口座にはできません) - 「戸籍謄本」
(年金受給権の発生日以降かつ「年金請求書」提出日の6ヶ月以内に交付されたもの) - 配偶者の個人番号(マイナンバー)記入欄に、配偶者のマイナンバーを記入
- 子の個人番号(マイナンバー)記入欄に、子のマイナンバーを記入
『彼女』の老齢年金請求で添付する書類等
- 「年金を受け取る口座の通帳の表紙と、表紙をめくった見開きページのコピー」
(年金受取口座の、口座名義人カナ氏名、金融機関名、支店番号、口座番号を確認します。なお、貯蓄口座を年金の受取口座にはできません) - 「戸籍謄本」
(年金受給権の発生日以降かつ「年金請求書」提出日の6ヶ月以内に交付されたもの) - 配偶者の個人番号(マイナンバー)記入欄に、配偶者のマイナンバーを記入
免責事項
このシナリオはフィクションです。
なお、「老齢年金請求で添付する書類等」に関しては、設定した状況に応じて、可能な限り正確な情報を掲載するよう努めています。
しかし、必ずしも正確性を保証するものではありません。
当コンテンツの内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。
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