年金記録問題の解決に向けた主な取り組み

年金記録

 年金記録問題の解決のためには、旧社会保険庁から日本年金機構へと渡って、様々な取り組みがされてきた。
 ここでは、その中でも主な取り組みを、3段落に分けて4つご紹介したい。

全部見直し、「年金記録に係るコンピュータ記録と紙台帳等の突合せ」

 年金記録問題では、基礎年金番号に統合されていないため持ち主不明の「宙に浮いた年金記録」だけでなく、基礎年金番号に収録された記録にも誤りがあることが明らかになった。
 そのため、現在ではオンラインのコンピュータで管理されている年金記録と、その元となった紙台帳(マイクロフィルムを含む)との突合わせが行われた。
 突合せの対象には、旧社会保険庁で管理していた紙台帳だけではなく、市町村で管理していた紙台帳も集められた。
 集められた紙台帳等は電子画像され、年金番号・氏名・生年月日などにより年金番号に紐付けて、その記録の元となった紙台帳を確認できるようにした。また、電子画像に索引データを入力することにより、各種検索により紙台帳の確認を可能にした。こうして「紙台帳検索システム」が構築された。
 このシステムを活用して、コンピュータ記録と紙台帳等の突合せ事業は行われた。
 この突合せ事業よって、基礎年金番号に収録された記録の期間、報酬、納付状況等に誤り見つかると、ご本人に通知し、回答を受付の上で訂正がされた。また、基礎年金番号に紐付けられた紙台帳の記録の中に「宙に浮いた年金記録」が見付かれば、その年金記録についてもご本人に通知され、確認が行われた。
 このコンピュータ記録と紙台帳等の突合せは、平成22年~平成25年の期間に集中的に行われた
 なお、この時に構築された「紙台帳検索システム」は、その後の年金記録の確認業務に日常的に取り入れられるようになった。
(参考のため、日本年金機構HPの「年金記録に係るコンピュータ記録と紙台帳等の突合せ」へ外部リンク)

回答がなければ何度でも送られる「ねんきん特別便」

 平成19年に年金記録問題が取り沙汰されるようになった直後、平成19年から平成20年にかけて、すべての年金受給者と加入者に「ねんきん特別便」が送付された。
 これは、基礎年金番号で管理されている年金加入期間をご本人にお知らせして、その記録にもれや誤りがないかを回答してもらうものだった。送付対象となった人数は、実に約1億873万人だった。(「年金記録問題のこれまでの取り組みと今後の対応」p2参照。第5回年金記録問題に関する特別委員会資料>○資料>資料1より。厚生労働省HPへ外部リンク)
 この「ねんきん特別便」には、性質の違う2種類があった。 
 1種類目は、封筒が青色のもので、平成19年12月~平成20年3月に送付された。
 この青色の「ねんきん特別便」では、基礎年金番号氏名性別及び生年月日「宙に浮いた年金記録」と一致または近似するため、同一人の可能性が高い方が送付対象となった。そのため、これは「名寄せ特別便」と呼ばれることがある。その「名寄せ特別便」が送付された人数は、約1,030万人だった。(「【概要版】年金記録問題に関する特別委員会報告書」概要6参照。「社会保障審議会 日本年金機構評価部会 年金記録問題に関する特別委員会 報告書のとりまとめ」>別添より。厚生労働省HPへ外部リンク)
 2種類目は、封筒が緑色のもので、平成20年4月~平成20年10月に送付された。
 この緑色の「ねんきん特別便」の送付対象となったのは、先の青色の「名寄せ特別便」の送付対象以外すべての年金受給者と加入者だった。そのため、これは「全員特別便」と呼ばれることがある。その「全員特別便」が送付された人数は、約9,843万人だった。(「【概要版】年金記録問題に関する特別委員会報告書」概要6参照。厚生労働省HPへ外部リンク)
 どちらの「ねんきん特別便」にも、記載された年金記録に「もれや誤り」が「ある」か「ない」かの回答が求められた。特に「名寄せ特別便」については、回答がなければ同様の書類を複数回再送し、「もれや誤り」が「ない」と回答してさえ、条件によっては電話や訪問をして確認するという念の入れようだ。
 この対応からも、日本年金機構では「宙に浮いた年金記録」の中から一定程度、記録の持ち主と確信できる抽出ができていることが見て取れる。
 なお、「名寄せ特別便」のように、日本年金機構が各種データからご本人の可能性が高い方を特定し、送付しているお知らせは他にもある。
 住民基本台帳ネットワーク旧姓等の氏名変更履歴から、送付対象となる方を抽出したものは、その封筒の色から「黄色便」と呼ばれいる。
 オンライン記録に反映されていないマイクロフィルムの記録から、送付対象となる方を抽出したものは、同様に「グレー便」と呼ばれている。
(参考のため、日本年金機構HPの「ねんきん特別便関係」へ外部リンク)

これからの年金記録を守るための「ねんきん定期便」と「ねんきんネット」

 年金記録問題が拡大してしまった要因の一つには、ご本人の年金記録を確認する機会が非常に少なかったことが指摘される。
 平成16年から、58歳の方を対象に年金記録が通知されるようになるまで、旧社会保険庁からご本人に対して年金記録を通知してこなかった。そのため、ご本人が自ら問い合わせに動かない限り、自身の年金記録がどのように管理しているか、年金の請求をする時が来るまでは目にすることがなかった
 年金記録問題が発覚した後、旧社会保険庁・日本年金機構は、年金記録を積極的に情報提供する体制作りを急いだ。
 平成21年には、先述の「ねんきん特別便」の後を受けて、毎年誕生月に年金加入記録を送付する「ねんきん定期便」が開始された。
 これは、直近13ヶ月の年金記録をハガキでお知らせするのを基本として、35歳45歳59歳には、それまでの全期間の年金記録を封書でお知らせしている。また、50歳未満の方にはそれまでの加入実績に応じた年金額が記載されており、50歳以上の方には直近の年金加入状況が60歳まで継続した場合の年金見込額が記載されている。 
 そして、インターネットで年金記録を確認できる「年金個人情報提供システム」平成18年に導入され、これをバージョンアップする形で「ねんきんネット」平成23年に開始された。
 更に、平成25年には「ねんきんネット」に「持ち主不明記録検索」機能が導入された。これは氏名・生年月日・性別を入力することにより、それに一致する「宙に浮いた年金記録」を探すことができる機能である。検索対象には、亡くなった方の記録も含まれる
 この機能は、現在よりも周知されて、広く活用される価値があるものだと感じている。
(参考のため、日本年金機構HPの「ねんきん定期便関係」「ねんきんネット」へ外部リンク)

まとめ

 日本年金機構から年金記録に関する問い合わせがあった場合、それは「宙に浮いた年金記録」が見つかったからかもしれない
 そのため、日本年金機構から届いた封書は放置することなく、中身を確認し、不明な点などがあれば日本年金機構に問い合わせをした上で、納得のいく回答をすることをお勧めしたい。
 また、「ねんきんネット」「持ち主不明記録検索」機能については、ご自身の記録だけでなく、ご本人から依頼されたことを前提に、両親祖父母などの年金記録にもれがないかも簡易的に調べることができる点は、特筆に値すると思う。
 更には、依頼を受けてこの機能を使うのは親族に限定されないため、ご高齢の方が多く利用する施設の方や、年金相談などを行う機会のある金融機関の方などでも活用されれば、「宙に浮いた年金記録」の解明ペースをグンと上げるポテンシャルを秘めていると思う。

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