憧れの海外移住(^^♪
早期リタイアをして海外へ、あるいは老後は海外で、と考えている方もみえるのではないでしょうか。
このページでは、海外へ移住する場合の年金手続きについてご紹介します。
年金ごとの海外転出の手続き
出国前の日本での年金の加入状況により、海外へ移住転出する際に必要な手続きが違います。
国民年金第1号被保険者(自営業者等)
20歳~60歳の間、厚生年金被保険者でも国民年金第3号被保険者でもない方は、国民年金第1号被保険者としての加入が義務ですが、海外へ行くとなれば、その加入義務はなくなります。
そのため、国民年金第1号被保険者が海外へ移住する場合には、出国前に市区町村役場にて、国民年金の資格を喪失する手続か、任意加入の手続きを行っていくことになります。
任意加入をする場合の保険料については、日本国内の協力者を納付書等の宛先として代わりに納めてもらうか、日本国内の預貯金口座から口座振替されるようにします。
厚生年金の被保険者(会社員、公務員等。国民年金第2号被保険者でもある)
厚生年金は会社との雇用関係が継続したまま海外へ転勤すると、厚生年金の加入も継続します。
ただし、外国の社会保障制度との二重加入防止等のため、多くの国と社会保障協定(日本年金機構HPへ外部リンク)が結ばれています。
国民年金第3号被保険者(会社員や公務員の被扶養配偶者)
国民年金第3号被保険者の方は、配偶者の方の勤務先を通じて、特例による3号資格の継続か、資格喪失の手続き(資格喪失後の任意加入の手続きは、ご自身で市区町村役場で)をします。
国民年金に任意加入する効果
国民年金の任意加入をすることで、年金給付の種類ごとに、それぞれ次のような効果があります。
- 老齢基礎年金:
この年金を受け取るためには10年の受給資格期間(保険料の納付、免除、猶予、厚生年金や共済組合等の加入、合算対象期間を合わせた期間)を満たす必要があります。
日本人が海外に在住している20歳~60歳の期間は、任意加入しなくても合算対象期間になるので、10年の受給資格期間には含まれますが、年金額には反映しません。
しかし、海外在住期間に国民年金に任意加入をして、保険料を納付することで、将来受け取る老齢基礎年金を増額することができます。
なお、任意加入可能な期間は65歳(受給資格期間の10年を満たしていなければ70歳)までで、任意加入期間中には保険料の免除や猶予の制度は適用されず、付加保険料(月の保険料に400円上乗せして納付することで、将来の老齢基礎年金の年額を200円増額する)の納付は可能です。 - 障害基礎年金:
この年金を受け取るための条件の1つに、障害の原因となった病気やけがの初診日に国民年金加入中であること、というのがあります(20歳前、または60歳~65歳で日本在住であれば、この条件は問われません)。
初診日が海外在住期間で国民年金の資格を喪失しており、厚生年金にも加入していないと、障害年金を請求することができません。
しかし、海外在住期間でも国民年金に任意加入しておくことで、病気やけがをしたときに障害基礎年金を受け取る条件の1つ(初診日に国民年金加入中)を満たすことができます。
なお、この他に障害基礎年金を受け取る条件として、障害の状態に関するものと納付状況に関するものがあります(【障害年金請求のまとめ】へ内部リンク)。 - 遺族基礎(厚生)年金:
遺族年金については、死亡された方の受給資格期間が25年以上あれば、死亡日に国民年金や厚生年金の加入中でなくても、発生するための条件の1つを満たします。
一方で、受給資格期間が25年に満たない方が死亡された場合は、遺族基礎年金であれば死亡日に国民年金加入中か60歳~65歳で日本在住が条件の1つとなります。
また、遺族厚生年金であれば、厚生年金加入中の死亡か、厚生年金加入中に初診日がある病気やけがによる初診日から5年以内の死亡か、1級か2級の障害厚生年金を受け取っていた方が死亡したことが、条件の1つとなります。
つまり、受給資格期間が25年に満たない方でも海外移住の際に国民年金に任意加入しておくことで、死亡した場合に遺族基礎年金が発生する条件の1つを満たすことができます。
なお、遺族年金には他にも納付状況に関する条件や、ご遺族の方の続柄や年齢などに関する条件があります。(【遺族年金の請求手続き】へ内部リンク)
外国からも「ねんきんネット」で年金記録の確認
外国からでも、インターネットに接続できれば、「ねんきんネット」により年金の加入状況や保険料納付状況について確認することができます。
海外へ行かれる前に、利用登録を済ませておくことをお勧めします。(【「ねんきんネット」のすすめ】へ内部リンク)
外国からの年金請求方法
海外居住者に対しては、老齢年金を請求できる年齢になっても、年金請求書は送付されません。
ご自身で老齢年金を請求できる年齢を確認しておき、その年齢到達後、海外から郵送するか、日本の代理人を通じて提出するようにしましょう。(【老齢年金の受け取り開始年齢】へ内部リンク)
提出先は、日本での最終住所地を管轄する年金事務所です。
なお、海外で年金を受け取るために特有の必要書類があります。
海外で年金を受け取るため特有の必要書類
「年金の支払いを受ける者に関する事項」:外国での住所や外国の銀行での年金受取口座を記載するための書類です。
口座証明、小切手帳の写し、通帳の写し等、口座番号が確認できる書類の添付が必要です。
なお、外国に住んでいても日本の銀行口座で年金を受け取ることはできますが、ゆうちょ銀行では受け取ることができません。
「租税条約に関する届出書」:老齢年金は日本で課税対象となりますが、外国とは二重課税防止等のため、租税条約が結ばれています。
租税条約を結んでいる相手国に居住する場合は、この書類の原本を二部提出することで、所得税法上で非居住者に課せられる所得税が免除されます(条約内容により、一部の国や地域を除く)。
なお、障害年金と遺族年金は非課税のため、この書類の提出は不要です。
「特典条項に関する付表(米)」:移住先がアメリカの場合は、この書類の提出も必要です。
これにはアメリカのInternal Revenue Service(米国歳入庁)で発行される「居住者証明書」(Form 6166)の添付も必要です。
海外で年金を受け取ると毎年届くもの
海外で年金を受け取る方には、毎年誕生月の前月末に日本年金機構から「現況届」が送付されてきます。
これに、誕生月を含めて6ヶ月以内に滞在国の日本領事館等で発行した在留証明書を添付して、誕生月の月末までに提出します。
この「現況届」の提出がなかったり遅れたりすると、年金の支払いが一時止まってしまいます。
また、老齢年金に関しては、必要に応じて居住国での税申告等に使用するため、毎年1月末に前年中の「非居住者等に支払われた給与、報酬、年金及び賞金の支払調書」が送付されてきます。
まとめ
- 海外転出の際には、国民年金の資格喪失か任意加入の手続きをする
- 老齢年金の請求年齢はご自身で意識する。
- 年金を受け取り始めてからは「現況届」の提出を忘れない。
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